Abstract Interview Vol.02 代官山蔦屋書店・江川賀奈予と掘り下げる、渋川のJAZZ。

Abstract Interview Vol.02 代官山蔦屋書店・江川賀奈予と掘り下げる、渋川のJAZZ。

〈セパバス(SEPARATE BATH&TOILET)〉のクリエイティブディレクターである渋川 進によるインタビュー企画。第2回目のゲストは8月25日からポップアップがスタートする「代官山蔦屋書店」の江川賀奈予さん。お互い初対面(?)ながらも、会話の呼吸がバッチリ合うふたり。今回は渋川氏なりのJAZZの解釈についてや、それがどう〈セパバス〉のクリエイションに活かされているかなど、珍しく真面目に語り合っています。

 

Photo_Susumu Shibukawa
Text_Yuichiro Tsuji

 

Profile

渋川 進 / SEPARATE BATH & TOILET Creative Director
年齢不詳、プロフィール非公開。
好きな食べ物:パン
好きな動物:カピパラ
口癖:「それでいいじゃん」

 

江川賀奈予 / 代官山蔦屋書店
2014年にカルチュア・コンビニエンス・クラブに入社。代官山蔦屋書店に配属となり、アートフロアのスタッフとして勤務。アートの展示やフェアの企画もおこなう。2021年4月より営業企画を担当し、展示やフェアの企画に加えて他企業のライブラリなどの選書もおこなっている。

 

「おつかれさまです🙏」って声かけられたりするんです

ー「Abstract Interview」の2回目ということで、今回もよろしくお願いします。 

渋川:どうも渋川です。よろしく。

江川:よろしくお願いします。早速なんですけど、それ、「スイークレイ(ウォーターサーバーのブランド)」のタオルですよね?

渋川:よくご存知ですね。江川さんも注文されてますか?

江川:してます。タオルいいんですよね。

渋川:このタオルは渋川もお気に入りです。生地も気持ちいいんですよ。

江川:刺繍の色もいいですよね。

渋川:そうなんです。江川さん、渋川と趣味が合いそうですね。

 

ー先日、インスタライブで〈セパバス〉のランウェイショーをやられてましたよね。

江川:すみません、見逃しちゃったんですよ…。

渋川:インスタのアーカイブに残ってますよ。

江川:あっ、本当だ。ちょっと見ながら話してもいいですか?

https://www.instagram.com/tv/Cg_qRBSML8s/?utm_source=ig_web_copy_link

 

渋川:この日はとても疲れたんですけど、達成感がすごくありましたね。渋川の友人や知人からも評判がいいんです。

江川:なんで服を持って歩いてるんですか?

渋川:渋川なりに新しいファッションショーの形を提案したかったんですよ。渋川の腕、ヘトヘトでした。

江川:しかも、これどこですか?

渋川:〈セパバス〉を運営する会社の食堂の通路です。いい感じの場所を見つけたと思いません?

江川:ちょっと狂気を感じます…。ニット帽の持ち方もヤバい。

渋川:ファッションショーって、普通はモデルに服を着せて歩かせるでしょう? 渋川はそれがずっと疑問だったんです。もっとちがうやり方があるんじゃないか? ってね。それで服を持って歩くことにしたんですよ。そんな方法でファッションショーなんて、まだ誰もやってないから。

 

ーシニカルな意味合いも感じますね。

渋川:これだけは絶対やりたかったんです。だから渋川、満足です。

江川:このショップチャンネルみたいな音楽はなんなんですか?

渋川:ネットでダウンロードしました。いいでしょ? 一応リズムに合わせて歩いたんですけど、曲の終わりとショーの終わりのタイミングがバッチリ合ったんです。

江川:最後もファッションデザイナーっぽく挨拶してますね。

渋川:デザイナーがよく、最後に合掌して去っていくでしょ。渋川いつも思うんですよ、なんで合掌なんだろうって。普段、道を歩いているときに「おつかれさまです🙏」って声かけられたりするんですけど、合掌ばかりに気を取られちゃうんです。

江川:グーとパーの合掌みたいなのもありますよね。少林寺みたいな。たしかに「なんで? 」ってなりますよね。

 

ーちょっとチャラチャラした感じというか。ノリの若さを感じますね。

渋川:こんど合掌されたら、そこにA4の紙でも挟んでみようかな。

江川:それ、めっちゃおもしろいです(笑)。コロナ禍になって肘をつき合わせてする挨拶も生まれましたよね。

渋川:ありますね。いきなり肘をつきだされたときは渋川も驚きました。「渋川さん、ウィーッス」って言いいながらやってきて、為す術なしの渋川でした。

江川:(笑)。

渋川:でも、そういう日常の違和感からインスピレーションが生まれたりするんです。音楽とか、映画とか、そういうところから着想を得る人も多いけど、渋川の場合は日常からなんですよ。江川さんは〈セパバス〉のどんなところがいいと思ってくださったんですか?

江川:〈セパバス〉がはじまったとき、すごいおしゃれなブランドだなって思ったんです。だけど、よく見たら変だなって。

渋川:鋭い。おっしゃる通り、よく見るとおかしいんです。

江川:〈SEPARATE BATH&TOILET〉っていうブランド名もなんか違和感があるんだけど、おしゃれにまとまっているんですよね。字面がいいというか。

渋川:“S”と“E”からはじまりますからね。渋川、その次はやっぱりあのアルファベットを想像しちゃいますね。

 

ーなんですか?

渋川:……“X”。

江川:……。

 

ー……。

渋川:渋川的にはいいブランド名で、いいロゴのデザインだと思ってますから。

 

普段はナヨナヨしてるけど、ベッドでは負け知らずみたいな。

江川:はじめは謎めいたおしゃれブランドだなっていう印象で。人の背中にステッカー貼ったりとかしてましたよね 

渋川:あのプレゼンテーションも渋川が考えたんですよ。そこからモデルを起用したビジュアルが公開されて、最近はとある女優さんがインスタグラムで紹介してくれて、ファッションショーもして。

江川:なんだかいい流れができてますね。

渋川:どうもです。

江川:モデルさんがあまり顔がでてないのもおもしろかったです。

渋川:秋冬のルックもいいですよ。今回も題府くんに撮ってもらったんですけど。振り切ってふざけているかと思ったら、かっこいいビジュアルで引き締める。そういう緩急が大事だと思ってますね。

 

ーずっとふざけているようで、キメるときはキメるぞっていうことですね。

渋川:普段はナヨナヨしてるけど、ベッドでは負け知らずみたいなね。

江川:……。

 

ーギャップが大事ということを言いたいんですか?

渋川:ご名答。いい意味で裏切るというか、そのセンスを分かってくれる人が増えたら、渋川感激です。

 

 

川久保さん、渋川よりもJAZZですね。

江川:インタビューで読んだんですけど、渋川さんJAZZをやりたいんですよね。 

渋川:そう。渋川、ファッションでJAZZをやりたいんですよ。

江川:そのJAZZの意味を理解できたらよさそうですね。

渋川:渋川のお父さんがJAZZが大好きで、家でずっとレコードをかけてたんですよ。渋川もこっそりお父さんの部屋に忍び込んで、レコードジャケットを眺めたりしてたんですけど、その中に1枚だけ怖いやつがあって。ドラキュラのメイクしたやつなんですけど、それを見たら怖くて眠れなくなっちゃったことがありますね。思い出です。

 江川:音楽の思い出じゃないんですね。

 渋川:中学生くらいから音楽に興味がでてきて、お父さんのレコードをよく聴いていたんですよ。

 江川:うちの父もJAZZが好きで聴いていましたけど、オープンリールのテープで聴いてましたね。

 渋川:それはすごいですね。

江川:JAZZって、1曲の中にすごい退屈なパートとキメのパートがあるじゃないですか。そういうところに、さっき話してた緩急を大事にしている〈セパバス〉との共通点があるように思います。

渋川:渋川、マイルス・デイヴィスのおもしろい逸話知ってるんです。

江川:なんですか?

渋川:マイルスのバンドではジョン・コルトレーンとかも演奏してたんですけど、マイルスってリハーサルとかもせずにいきなり演奏をはじめるそうなんです。だからバンドのメンバーたちはそこにノッていかないといけない。演奏はもちろん即興なわけで、そこでヘマをしてしまったプレイヤーは帰されるらしいんですよ。そういう人たちがいっぱいいたそうなんです。

江川:でも、そのヘマってマイルスから見たヘマであって、フィーリングでしかないですよね。

渋川:そうですね。だから味のあるヘマをすればおもしろいってなる。そうゆうのがすごく魅力的だなと思うし、渋川はファッションでそれをやりたいんです。そういう考え方で、という意味ですけどね。

江川:ひらめきが大事ですね。

渋川:そうですね。毎シーズン服を考えるわけですけど、あえて考えないようにしているというか。決め込まないようにしてるんです。〈コムデギャルソン〉のドキュメンタリー見たことありますか? コレクションの企画からできあがるまでを追いかけてるんですけど、最初の企画会議で川久保さんが「いま怒りを感じている」って言ってて。その“怒り”っていう感情から服をデザインするみたいなんです。

 江川:どうゆうことですか?

 渋川:普通は、こういうテーマがあって、こういうパターンで、みたいなデザイン画を用意すると思うんですけど。川久保さんの場合は、“怒り”っていう言葉をチームに伝えて、その概念を形にするんですよ。そこから想像してパタンナーがパターンを引いたりして。だから一緒に働いている人はついていくのが大変ですよね。

江川:へぇ~! すごい!

渋川:川久保さん、渋川よりもJAZZですね。

江川:急にはじめるのはマイルスと一緒ですね。

渋川:それがいいというか、憧れますね。本来そんな服のつくり方ってしないんだけど、それをずっとやっているわけでしょう。だけどショーではモデルに着せてますね。渋川は着せませんから。

江川:渋川さんもJAZZですね。

渋川:どうもです。

 

 

渋川も見た目が気持ち悪いですから。

ー実際に〈セパバス〉の服をご覧になられてどうでしたか? 

江川:意外とって言ったら失礼ですけど、オーガニックコットンを使ってたりとか、ちゃんとしてるなぁって思いました。キャップもロゴが変なところにあって、そこも実はデザインされているんだろうなっていうのを感じますし。

渋川:表現方法はおもしろいんだけど、つくるものはベーシックにしたいなと思ってるんですよ。渋川も基本、シンプルな服が好きですから。だから突拍子もないものはつくる気ないんです。

江川:人の背中にステッカー貼ったり、モデルに服を着せないでショーをしたり、ふざけているのかな? って思うんですけど、じつはちゃんと服をつくっていて。みんなそのギャップに惹かれている気がしますね。あとはやっぱりこのロゴがいいですね。すごくアイコニックで。

渋川:本当ですか? 渋川、感激です。ロゴってすごく大切なものなので、これはずっと守りたいなって思ってます。

江川:なんかちょっとズレてて違和感あるところもチャーミングですよね。

渋川:渋川も見た目が気持ち悪いですから。そこが共通してますよね。

江川:……。

 

ー江川さんが困ってます。ダメですよ、困らせちゃ。

江川:でも、違和感ってすごく大事だと思うんです。キレイで整っているものが当たり前になりすぎて、全部おなじに見えちゃうというか。引っかかるものがないと世の中からどんどん流されていっちゃう気がしていて。

渋川:“引っかかるもの”、ですか。渋川、メモします。

江川:でも、みんなに着てほしいっていうお気持ちはあるんですか?

渋川:もちろんありますよ。そうじゃないと成立しないですから。そのあたりのバランスをうまくやりたいですね。

江川:代官山の蔦屋書店って、ポップアップとかをするとおもしろい売れ方するんです。洋服って好きなセレクトショップに行ったりとか、そのブランドが好きで買うっていうのが一般的だと思うんですけど。

 

ーそうですよね。 

江川:でも、うちでポップアップをやるときって、このブランドが好きで目がけて来ました! っていう人よりも、たまたま入ったお店でたまたまユニークなものを見つけたから買ってみました、っていう人が多いんです。そうゆう買い物の仕方ってすごくおもしろいなって私は思うんです。先入観なしにフラットな気持ちで買い物をしてくださるお客さまがいてくださると、ブランドさんにとってもすごく広がりがあると思うんですよ。

渋川:それはうれしいことですよね。渋川、ワクワクしてきました。

 

雇われクリエイティブディレクターなので。

渋川:話は変わりますけど、最近20代の子たちがすごいなぁって思うことがあって。飲食店のオーナーだったりするんですよ。まだ若いのに。それがおしゃれで雑誌に取り上げられたりしてて。これは渋川的推測ですけど、きっちりマーケットを見て用意周到につくりあげているんだろうなって思うんです。 

江川:いまの20代の子たちって本当すごいなって私も思います。理解が早いというか。 

渋川:すごく頭がいいんでしょうね。お店をつくるのも、どうゆうスタイルで、どうゆう立地で、どうゆう価格帯で、どうゆう客層を狙うかっていうことをしっかり計算していると思うんです。いい意味でビジネスのことをしっかり考えている。渋川、感心です。

江川:渋川さんはそうじゃないんですか?

渋川:渋川には絶対できません。渋川、JAZZみたいな動きしかできませんから。

 

ーある意味、用意周到に計算されたものはJAZZではないってことですもんね。

渋川:そうなんです。だけど、用意周到に計算できる人って本当にすごい。渋川にはできないことだから。

江川:いろんな人がいて世の中のバランスが保たれているってことですね。でも渋川さんのやっていることは、ちゃんと芯があるから魅力的なんだと思いますよ。

渋川:渋川の考え方はすごくシンプルだし、手軽な方法で表現しているから真似しようと思えば誰にでもすぐにできるんです。でも、それは所詮真似事であってオリジナルではないんですよね。

江川:真似事には芯はないですからね。

 

ー渋川さんはきちんとオチをつくることも意識されているんですよね。

渋川:そうですね。渋川の場合、オチがあったほうがすっきりするというか。そうすることで、渋川のことを知らない人にもおもしろいって思ってもらえるでしょう? 渋川的にもっと突き放したこともできるんですけど、〈セパバス〉の運営会社に迷惑かけちゃうんで。渋川、雇われクリエイティブディレクターなので。

 

ーそれでも結構好き勝手やってますよね?

渋川:そうですね。感謝してます。

江川:でも、そうやってギリギリのラインを狙っているところも魅力だと思いますよ。

渋川:基本はJAZZなんで。来年の春夏もどんなものができあがるかわかりません。渋川のスタイルとは真逆な感じになるかもですよ。

江川:真逆って?

渋川:合掌系🙏。

江川:そしたらめっちゃウケます(笑)。楽しみにしてますね。

渋川:どうもです。

  

ということで、今回の「Abstract Interview」はこれにて終了。やっぱり真面目なのかふざけているのか掴めない渋川氏は、インタビューの途中で「寒くなってきました」とクーラーの温度を上げてました。

「代官山蔦屋書店」では8月25日から9月11日まで〈セパバス〉のポップアップを開催中。期間の前半は春夏のアイテムを展示して、途中から秋冬のアイテムに切り替わる予定ですので、会期中は2度足を運ぶことをおすすめします。