Abstract Interview ジャーナル スタンダード・バイヤー、内藤有希に直撃インタビュー!

Abstract Interview ジャーナル スタンダード・バイヤー、内藤有希に直撃インタビュー!

 

〈セパバス(SEPARATE BATH&TOILET)〉のクリエイティブディレクターに就任した渋川 進。今回は彼がインタビュアーとなり、気になるあの人に直撃。そのインタビュー相手に選ばれたのは、〈セパバス〉のポップアップ・イベントをおこなっているセレクトショップ「ジャーナル スタンダード」のバイヤー、内藤有希さん。「実は目が何個もある」と意味不明なことを口にする渋川氏が、さまざまな角度から内藤さんの心の内側を暴きます。

 

Photo_Susumu Shibukawa
Text_Yuichiro Tsuji

 

Profile

渋川 進 / SEPARATE BATH & TOILET Creative Director
年齢不詳、プロフィール非公開。
好きな食べ物:パン
好きな動物:カピパラ
口癖:「それでいいじゃん」

 

内藤有希 / JOURNAL STANDARD BUYER
2009年にベイクルーズ入社。ショップスタッフ、プレスを経て、2018年より「ジャーナル スタンダード」のウィメンズのバイヤーに就任。

 

 

それが〈セパバス〉の強みなんですよ。
全然意図してなかったけど。

ー今回は渋川さんがインタビュアーとなって進行する企画ということで、よろしくお願いします。

渋川:どうも渋川です。よろしく。

内藤:よろしくお願いします。

 

ーインタビュー、大丈夫ですか…?

渋川:今日の渋川、質問とかまったく考えてないんです。

内藤:…(苦笑)。

 

ーじゃあ…、まずは「ジャーナル スタンダード」でのポップアップはどうしてやることになったのか教えてください。

 渋川:〈セパバス〉の担当者が内藤さんから連絡いただいたそうなんですよ。ちょうどインスタグラムが立ち上がって、服の写真などをアップした頃だったと思います。おもしろそうだなって思ってくれたんですか?

 内藤:そうですね。インスタをチェックしてて、なんだか気になるブランドだなと思って。栗原っていう上司がいるんですけど、「めっちゃいいじゃん」って言ってて。

渋川:その栗原さんっていう人が全権を握っているの?

内藤:一応エラい人なので。「本当にやっていいんですか?」って念のため確認したんですよ。そしたら「いいよ」ってOKもらえたんです。

渋川:そんなエラい人に認めてもらえるなんて、渋川、感激です。

内藤:とんでもないです。

渋川:実際にアイテムをご覧になられてどうでした?

内藤:普通なんだけど、普通じゃないというか。だけど、実際にサンプルを見たら型数がめっちゃ多くて。

渋川:本当に? そんなにあると思わなかった?

内藤:すごく多かったですよ。ビックリしました。普通だと多色展開で、型数はもっと少ないけど色のバリエーションが多いっていうのが大多数なんです。だけど、〈セパバス〉の場合は1色でいろんなアイテムを展開していたので。 

渋川:それが〈セパバス〉の強みなんですよ。全然意図してなかったけど。

 

ー意図しててください。

渋川:カラーバリエーションを増やして手を抜いてると思われるのがイヤだったんです。だから真面目にひとつ一つデザインをちゃんと考えたんですよ。

内藤:だけど、ラインナップを見ていいなと思いました。スウェットのセットアップとか、可愛かったです。

渋川:ブランド名に“TOILET”って入ってるから、コンサバティブな人には受け付けてもらえないかもしれないですね。お風呂はまぁいいんだけど。“SEPARATE BATH&DOGS”とかだと、ちょっと成り立たないでしょう?

 

ー急に代官山や広尾感が出ましたね。

渋川:そうでしょう。だからやっぱり“TOILET”がいいなって。ブランドネームは一生懸命考えたんですよ。前に渋川のインタビューを〈セパバス〉のホームページに掲載したんですけど、読んでくれました?

内藤:もちろん読みました。JAZZなんですよね。

渋川:そうそう。渋川、ファッションでJAZZをやりたいんですよ。それでオファーをいただいて、どんなブランドにしようかと思いを巡らせました。そしたらちょうどオーガニックコットンでつくられた生地や服などのサンプルがあってね。渋川がオーガニックコットンでものづくりしたらおもしろいと思ったんですよ。だけど、オーガニックコットンだけでやるのも限界があるでしょう? だからテーマが「ちょいサステナブル」なんです。

内藤:なるほどですね。

渋川:でも、もしかしたら次のシーズンは“ちょい”も消えちゃうかもしれない。

内藤:どういうことですか?

渋川:サステナブルの“サ”の字もなくなっちゃうかもしれない。

内藤:…。

 

ー内藤さんが困ってます。

渋川:これは渋川流のジョーダンです。本当はこう思ってるんです、オーガニックコットンを毎シーズン使えば「ちょいサステナブル」にはなるかなと。だからそのつもりでいます。こういうブランドをはじめるときって、みなさん会議を重ねるんでしょう?

内藤:そうですね。

渋川:でも渋川の場合、ちがうんですよ。「こういう服をつくりたい」っていうイメージを共有するために、LINEでチームに画像を送るんです。すると、会話が盛り上がっていたはずなのに全然返事がこなくなる。

内藤:たぶん、どう反応していいのかわからないんだと思います(苦笑)。

渋川:渋川の中ではイメージが固まっているんですけどね。来年の春夏のデザインもそろそろ考えなきゃいけないから、またイメージを送るんですけど。

内藤:返ってこないんですか?

渋川:その通り。よくわかりましたね。

内藤:すぐにわかりました。

渋川:だけどそうゆうのはどんどん慣れてくるものだと思ってますから。

 

ーちなみに、「ジャーナル スタンダード」でもやっぱりサステナブルな服が増えてるんですか?

内藤:そうですね。オリジナルのアイテムも含めてちょっとづつ増えていってます。それじゃなきゃイヤっていう人はまだいないですけど、やはりみなさん関心を持たれているトピックのひとつであるのは間違いないですね。

渋川:そうですよね。いまはそうゆうのをやってないとダメなんでしょう? 

内藤:そうなんです。だから徐々に増やしてますね。

渋川:とはいえ、それって簡単なことじゃないと渋川は察してるんです。

内藤:大変ですね。正規の認証を受けた素材を使ったりしないといけないので。

渋川:内藤さんは、サステナブルしてますか?

内藤:マイボトルを持ち歩くようにしてますね。朝、コーヒーを入れて会社に持っていってます。

渋川:渋川もクルマじゃなくて自転車乗ってます。免許持ってないんで。

 

ーファッション業界でできるサステナブルって、そうした素材を使う以外にあるんですかね?

内藤:在庫をなるべく持たないようにすることですかね。なので、「ジャーナル スタンダード」ではECサイトで受注を受けて、余計な在庫を持たないように細かく発注するようにしているんです。

渋川:さすが「ジャーナル スタンダード」。やることやってますね。やっぱり、いまはネットのほうが順調ですか?

内藤:コロナ禍になってグンと上がったというのはありますね。でも、お店で買い物を楽しみたいというお客さまも結構いらっしゃるんです。ECで商品をチェックして、お店で現物を見て買い物をするっていう方もいらっしゃいますね。

 

 

 

「わからない」のほうが記憶に残るでしょう?

 

渋川:話は変わるんですけど、内藤さんだったらどのアイテムをどうやって着ますか?

内藤:スウェットが可愛いですよね。Tシャツもいいなぁと思ってて。

渋川:ロゴの主張が強い服をデザインしちゃったんで、ハイセンスな人じゃないと着こなせないのかなと心配しているんですよ。

内藤:スウェットのショーツとかに、あえてジャケットとか合わせてみたいですね。

渋川:渋川のおすすめは、スウェットパンツのレイヤー。ロングの上からショーツを穿くのがおしゃれです。

内藤:それも可愛いですね。私はスウェットっていうリラックスしたアイテムに、ちょっとかっちりした服を合わせたいですね。

渋川:つぎのコレクションのルックでも、実はスウェットパンツとシャツを組み合わせてスタイリングしてるんです。

内藤:そういうハズしたコーデがいいですよね。

 

ー内藤さんから見て、〈セパバス〉はファッションとして成立してますか?

内藤:もちろんファッションだと思います。だけど、アート的でもありますね。ひとつ一つのアイテムはしっかりとファッションアイテムとして成立するんですけど、全体感をみるとアート感があるというか。渋川さんの存在もそうさせているのか、どういうブランドかわからない謎めいた感じがあるんですよ。

渋川:実はなんですけど、渋川もよくわかってません。

 

ーディレクターとして、本当にそれでいいんですか?

渋川:渋川は理解しやすいものにおもしろみを感じないタイプなんですよ。だけど、世の中はそうじゃない。分かってないと不安になるでしょう? そこが勝負だと思ってます。答えが欲しいという世の中に対して、ディレクター自身もわからないものを提案するっていうね。

 

ー「ジャーナル スタンダード」のスタッフの人たちも理解に苦しみそうですね。

内藤:とりあえず、「めっちゃ可愛いブランド」って伝えてますね。それ以外に伝えようがないので…。

渋川:だけど、渋川は思うんですよ。ありきたりなブランド説明をされても、果たしてそれが記憶に残るのか? ってね。

内藤:たしかに、そうゆうことはあるかもしれません。

渋川:だったら、「わからない」のほうが記憶に残るでしょう?

内藤:そうかもしれないですね。

渋川:それが渋川マジックです。

内藤:ありがとうございます。

渋川:渋川がファッションブランドのディレクターをやるのは、今回はじめてなんですよ。だけど、ブランドの担当の方々はみなさん渋川のことを信頼してくれているんです。もし、もうひとり裏のディレクターみたいな人がいたら、おもしろい服はつくれてなかったと思います。

内藤:意見が食い違っちゃうかもしれないということですか?

渋川:そうなんです。だけど、ミーティングのときに渋川はちゃんとスタッフのみなさんの意見を聞くんですよ。デザインがAとBで2案あったとして、自分はAが好みだけど、みんなはBがいいと言うなら、渋川はちゃんとBを選びますから。

内藤:柔軟なんですね。

渋川:渋川、実は目が何個もあるんですよ。

内藤:どういう意味ですか?

渋川:…。

 

ーたぶん…、視野が広いということを言いたいんだと思います。

内藤:あ、なるほど。だからサングラスを3つもかけてるんですね。

渋川:メッセージです。いろんな角度からモノを見ているっていうね。

 

 

 

付き合いそうで付き合わない、でもヤっちゃってる、みたいな。

 

ーそろそろ内藤さんに質問をお願いします。

渋川:バイヤーっていう職業は服を買い付けるわけですけど、いくら自分が可愛いって思ってても売れ残ってしまうものもありますよね?

内藤:残念ながらそういうときもありますね…。

渋川:だけど、有名人がインスタグラムにアップしていきなり売れるということもあるでしょう?

内藤:はい、それもありますね。

渋川:それがファッションの難しいところですよね。

内藤:そうですね。私は個人的に尖ったデザインも好きなんですけど、それだけだと成り立たないので、ベーシックな服であったり、合わせやすい服も仕入れるようにしていますね。あとはお店のスタッフが着てくれるかどうかというのも重要なんです。

渋川:なるほど。そういう視点もあるんですね。内藤さんも目がいくつもあるタイプだ。

内藤:2つしかありません。

渋川:ですよね。ジョーダンです。

 

ーお店のスタッフが着てくれるかどうかというのは、実際にお客さんと接するからということですか?

内藤:そうですね。私は商品を仕入れる役目であって、実際にお客さまにおすすめするのは店頭にいるスタッフなので。お店のスタッフが気に入ってくれないと、ちゃんとお客さまに自信を持って接客できないですよね。だから、「あの子はこれ好きそうだな」とか考えながら服を見ていますね。

渋川:だけど、いまってトレンドというものがほとんどないでしょう? なんとなくサイズ感とかの流行はあるけれど、ファッションがすごく細分化されていて、ターゲットを絞りにくいんじゃないですか?

内藤:たしかに、いまはトレンドがないかもしれないですね。

渋川:むかしはあったんだけどね。渋カジ、アムラー、山ガール、森ガールとかね。

 

ーだいぶ古いですね。

渋川:いまはなにが流行ってるの?

内藤:わからないですね。

渋川:見出しがひとつできました。「バイヤー内藤 わからない」。

内藤:やめてください。

渋川:ジョーダンです。渋川は思うんですけど、流行がないなら、こっちから仕掛けていかないといけないですよね。

内藤:そうなんです。「これがいい!」っていうのを打ち出すようにしてますね。提案型というか。

渋川:それがトレンドになったときに、今度は他のショップとかに真似されるでしょう。だからいたちごっこですよね。渋川的にベストだと思っているのは、流行りそうで流行らないラインなんですよ。〈セパバス〉はその辺りを目指しているんです。付き合いそうで付き合わない、でもヤっちゃってる、みたいな。

 

ーいちばん楽しい時期ですね。

渋川:すごい曖昧なところ。

内藤:それが「わからない」のがいいという真の意味ですか?

渋川:曖昧にしていたほうがいろんなことがしやすい。だけどブランドのロゴだけしっかりしていれば、ちゃんと〈セパバス〉であることは認識されるわけだから。そういう意味でこのブランドネームとロゴはすごく重要なんです。ずっと見ていると、なんかいいなって思うでしょう?

内藤:たしかに可愛いですね。トイレっていうのもネガティブに感じないです。

渋川:ロゴだけ変わらずに、服は毎シーズン渋川の気分を投影しようと思っているんです。あんまりそういうブランドないですよね?

内藤:たしかに、そう言われてみるとそうかもしれません。

渋川:毎回ジャーナルさんが買いやすいものをつくりますよ。

内藤:本当ですか?

渋川:ジョーダンです。

 

 

 

 

渋川、腰やっちゃってるんで。

 

ーでは、そろそろ締めに入りたいと思います。今回、渋川さんに会ってみてどうでしたか? 

内藤:〈セパバス〉の型数と同じくらいジョーダンが多い人だなと思いました。

渋川:恐縮です。

内藤:だけど、かっこいいなって思いましたよ。

渋川:本当?

内藤:自由な考え方で、既存の概念に囚われていないところが素敵だと思います。

渋川:ありがとうございます。渋川、超感激です。

 

ー「ジャーナル スタンダード」でのポップアップはどのお店で開催されてるんですか?

内藤:渋谷スクランブルスクエア店と、難波店ですね。どちらも〈セパバス〉の世界観がハマりそうなお店なので、気になった方はぜひお店に足を運んで欲しいです。

 

ー〈セパバス〉はECサイトのみで販売されていて。今回はじめてポップアップで店頭で実物を見れるわけですよね。

渋川:そうですね。渋川の実力が試されますね。

 

ー渋川さんは店頭に立たないんですか?

渋川:NO STANDINGで。渋川、腰やっちゃってるんで。

内藤:それで長時間の接客は難しいですね。

渋川:腰が悲鳴あげちゃうんで。

内藤:気をつけてください。

渋川:どうもです。

 

ということで、渋川さんがインタビュアーになって内藤さんのことを聞き出すはずが、渋川さんが勝手に自分のことをしゃべる展開になってしまった「Abstract Interview」。「ジャーナル スタンダード 表参道店」では、渋川さん自ら設営をした〈セパバス〉のインスタレーションも実施中なのでお見逃しなく! だけど、実際にアイテムを展開しているのは「ジャーナル スタンダード」の渋谷スクランブルスクエア店となんば店ですのでお間違いのないようご注意ください(ややこしい!)。