Abstract Interview vol.03 ティンバークルーが制作したセパバスのツールボックス。

Abstract Interview vol.03 ティンバークルーが制作したセパバスのツールボックス。

一風変わった建材屋として知られる「ティンバークルー(TIMBER CREW)」。独自のアプローチで木材にエイジング加工を施すなど、木の魅力を活かしたものづくりで支持を得ています。今回、そんな彼らに〈セパバス(SEPARATE BATH & TOILET)〉がツールボックスをオーダー。これまでのクリエイティブ通り、一筋縄ではいかない注文をしちゃいました。我らがクリエイティブ・ディレクターである現代美術作家の加賀美健と、ティンバークルーに、その制作秘話を語ってもらいましょう!

Photo_Motoyuki Daifu
Text_Yuichiro Tsuji


Profile

加賀美健

1974年生まれ。東京都出身。ドローイングや彫刻などの作品をリリースし、国内外問わず多数の美術展に出展。アパレルブランドとのコラボレートも積極的に行ない、自身が運営する代官山の「ストレンジストア(stranges.exblog.jp)」では、自作のTシャツなど グッズ類を展開している。
Instagram:@Kenkagami

TIMBER CREW
東京都調布市深大寺にある建材屋。店舗や企業のオフィスなどの床や壁、天井をつくっている。製造の過程で出てしまった端材を使用した「TIMBER CREW PRODCTUS」や、造園、インドアグリーン、ディスプレイにランドスケープデザインを手がける「TIMBER CREW GREEN」も展開。

 

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あれに反応したのは加賀美さんがはじめてです。


ー加賀美さんが加賀美さんとして〈セパバス〉のオフィシャルサイトに登場するのは、これがはじめてですよね。

加賀美:たしかにそうだね。いつもは渋川として出演してたから。

TIMBER CREW(以下、TC):いつもカツラをかぶってましたよね(笑)。

加賀美:そうなんです。満を持して登場です(笑)!


ー今回ツールボックスをつくったということなんですが、〈セパバス〉と「ティンバークルー」って意外な組み合わせですよね。

加賀美:「HATCH」っていうキュレーションサイトがあるんだけど、そこでいろんなクリエイターが自分でセレクトしたものを売ってるの。

TC:それでぼくらが〈セパバス〉のアイテムを紹介しているんです。


ーなるほど!

加賀美:まえに代官山蔦屋書店でイベントをやったときに、〈セパバス〉の横で「ティンバークルー」もポップアップをやってたんだよね。そこでぼくらのアイテムを見てくれて。そうゆう縁があって今回「『ティンバークルー』となにかやろう!」ってなったんだよね。


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ー「ティンバークルー」はどうして〈セパバス〉をセレクトされたんですか?

TC:会社のみんなで「とにかくいろんなものを出そう!」と(笑)。自分はえんぴつのクッションを蔦屋で見てて、写真を撮って娘に見せたら「欲しい!」って言われたんですよ。それで買って、持って帰ったんですけど、妻にこっぴどく叱られまして…。

加賀美:勝手に買っちゃったんですか(笑)?

TC:それもそうなんですけど、デカすぎて(笑)。だけど、娘はすごくよろこんでましたよ。


ー(笑)。意外と人気なんですよね、クッション。

加賀美:そうなんだよ。新しいクッションも攻めてますよ。請求書と辞表だから(笑)。


ーモチーフ選びの基準がよくわかりません!

加賀美:そうゆう経緯で、今回やらせて欲しいとオファーしたんだよね。

ーそれでこのツールボックスが誕生したわけですね。

加賀美:最初の打ち合わせ前に、なにをつくるかイメージしておいてって言われてて。はじめは子供用の椅子とかテーブルがいいかなって考えてたんだけど。いざここに来て、なにができるか話を聞いているうちに、他にもできそうだなって思ったの。


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ー「ティンバークルー」は、自分たちの手を使って加工を施したフローリングなどの建材や、オーダーがあれば家具などを制作しているんですよね。

加賀美:それで工房をひと通り案内してもらったんだけど、そのときにキャスター付きのツールボックスを見つけて。ビビビッてきちゃったんだよね。


ー松田聖子みたいですね。

加賀美:本当にそんな感じ。「なんですかこれ!?」ってなって。

TC:入出荷担当のスタッフが梱包用の道具をまとめるために自分でつくったものなんですよ。いろんなお客さまを案内してますけど、あれに反応したのは加賀美さんがはじめてです。

加賀美:すごいかっこよかったので。それを〈セパバス〉のためにアレンジしてもらったものを今回発売します。オリジナルとほとんど同じなんだけど(笑)。


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どうしよう、真似されたら。


ーどんなところをアレンジしたんですか?

TC:先ほども話したようにオリジナルは梱包用の資材をまとめるためにつくったので、それを家庭用に使いやすくアレンジしました。たとえばティッシュを置けるようにしたりとか。

加賀美:あとはDVDとかiPadも置けます。


ーわかりづらい下ネタはやめてください。

加賀美:それはジョーダンだけど、本当に置けるからね(笑)。あとは大きすぎるから、家の中に置きやすいようにサイズも整えてます。


ー加賀美さんが好きそうなデザインですよね。

加賀美:ああいうデザインって探しても絶対にないからね。ステンレス製のツールボックスとかはよく見るけど、あそこまでクラフト感のあるものはない。自分でつくろうと思っても、ああいうアイデアはここで働いているひとじゃないと出てこないよ。どうしよう、真似されたら。

TC:簡単に真似できますよ(笑)。


ーつくるのは大変じゃないんですか?

TC:ベニアとビスとキャスターがあれば簡単にできますよ。

加賀美:そうですよね。切ってつけるだけですもんね?


ーそんな簡単に言わないでください。つくっているものはすべてハンドメイドになるんですよね?

TC:そうですね。

加賀美:「もうちょっときれいに仕上げますか?」って言われたんだけど、「これでいいです」って伝えて。極力DIY感をキープしてほしかったんだよね。商品化したらもっとスマートになると思うんだけど。


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ーそうした道具を自分でつくられるスタッフさんが多いんですか?

TC:そうですね。必要なときに必要なものをつくって、それを使うだけなんです。どこかに持っていこうとかそういう感覚がないんですよ。この空間も自分たちで手を加えながらいまの状態になっていて。はじめにデザインを決めて、それに向かってつくっているわけではないんです。なりゆきでこうなっているというか(笑)

加賀美:だからいいんですよね。

TC:このテーブルも天板だけ決まってて、「じゃあ、足どうする?」みたいな感じでつくったんですよ。それで近くに置いてあった丸太を足代わりにして、「これでいいじゃん」みたいな。そんなテンションでいつもつくってて。もちろん、オーダーいただいたものは色々打ち合わせをしながらつくってますが。

加賀美:職人の集団ってことですよね。ぼくもデザイナーがいて、家具とかデザインしているのかな? って思ってたんだけど、全然ちがった。

TC:うちにはデザイナーがいないんです。クライアントがデザイナーで、発注を受けたものをつくっているだけなんですよ。

加賀美:それがいいんですよ。もしデザイナーとかがいたら、きっとあんなDIY感のあるものはつくられてなかったと思う。

TC:クライアントが相手だったら、あんなラフなの許されないですよ(笑)。


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ーだけど、そのラフがよかったわけですよね。

加賀美:すごいよかった。こういうのが家にあったらいいのにって本当に思ったもん。アーティストのスタジオにもきっと合うよ。工具を使う作家さんとか、すごく便利だと思う。意外とこういうの売ってないから。

TC:家庭でも使えるように、キッチンペーパーやサランラップを備えられるようにしたりとかしてますね。それを台所に置いてもいいし、洗面所に持って行っても使いやすいと思いますね。タオルとかを置いたりして。

加賀美:真ん中に穴が空いているから、洗濯物入れにしてもいいですしね。

TC:そうですね。本当に使い方は自由なので、ユーザーに委ねる感じです。


ーそして、おなじみの〈セパバス〉のロゴが焼印されるわけですね。

加賀美:そうだね。わざわざこのために焼印用のスタンプをつくったからね。ジュってやつ。


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これに紐つけて外歩いてたらかっこいいよね。


ー工房を回りながら、加賀美さんが「これがいい」ってなったときに、どんなことを思いましたか?

TC:「本当にいいんですか?」って何回も言いましたよ(笑)。

加賀美:〈セパバス〉のスタッフも驚いてましたよね。「こ、これですか?」って(笑)。

TC:実物は結構ラフにつくられていて、歪みとかもあったので…(苦笑)。そこは製品化するにあたって修正してますが。

加賀美:制作は「ティンバークルー」だから、しっかりするところはしっかりさせたいですよね。

TC:ビスが内側に突き抜けていて、せっかくゴミ袋を入れたのに中で破けたらイヤじゃないですか(笑)。うちとして最低限直させて欲しいところは直してます。


ーそういう意味ではオリジナルのアップデート版になっているということですよね。色を塗ろうとは思わなかったですか?

加賀美:思わなかったね。あの年季が入ってる感じがよかったから。さすがにそれを再現するわけにはいかないけど、使っていたら味が出てくるんですよね?

TC:どんどん出てきます。今回無塗装仕上げなので、コーティングされていないんですよ。だから味が出やすいです。

加賀美:それがいいですよね。なんか描いちゃってもいいし。メモとか(笑)。


ー加賀美さんはスタジオに置くんですか?

加賀美:そうだね。ペンとか置いたりして。あとはゴミとかも結構でるから。自宅の台所に置くのもいいかも。うちの奥さんも気に入ってましたよ。それか、これに紐つけて外歩いてたらかっこいいよね。

TC:おもしろいですね(笑)。


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ー最後に聞きたいんですが、もし第二弾があるとしたら、どんなものをつくりたいですか?

加賀美:一発目にこれをつくっちゃったからね。難しいなぁ。


ーちなみに「ティンバークルー」はつくれないものはないんですか?

TC:もちろんありますけど、だいたいつくれると思います。

加賀美:あんまりみんながつくらないものにしたいよね。

TC:やっぱり当初のイメージ通り、子供用のイスとテーブルですかね?

加賀美:いや、屋台にします! 〈セパバス〉の焼印を押して。そんなの売れないか(笑)。


ということで、〈セパバス〉のツールボックスは10月12日(木)に発売予定。イマジネーションを刺激するアイデアはもちろん、「ティンバークルー」が制作を手がけているため、そのクオリティもお墨付きです。ご自宅で使ってもいいし、オフィスやスタジオ、店舗での使用にも対応します! 使い方はあなた次第です。


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